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ウェブ担当者の地震対策マニュアル!ECサイト復旧までの実録ドキュメント

2016/06/28 [Tue]

▲ 鯰絵は、大ナマズが地下で活動することによって地震が発生するという民間信仰に基き、安政の大地震の後、江戸を中心に大量に出版されたといわれています。こいつを退治れば地震がなくなるというわけではないのであしからず。

はじめに~弔旗たなびく

毎年3月11日、近所の交番の前を通ると、
祝祭日でもないのに国旗が掲げられています。

そして、そのポールの頭には、
黒い布が巻き付けられています。

毎年これを見るたび、あの日の出来事が、
「民族共通の記憶」なのだと実感します。

この記事を書くにあたり、
あの日、命を落とした全ての方々に、
哀悼の意を捧げます。

ECサイト責任者としておこなったこと「商品の到着が遅れる」という告知

あの日、私の働いていた宇都宮の事務所は、
たまたま停電に遭わずに済みました。

そのため、パソコンやモデムルータの電源も落ちず、
ユーザーに対してどのような告知をすべきか、
対策を立てることができました。

まず最初に打ち出したのは
「運送が麻痺しているので商品の到着がいつになるか分からない」
ということ。

これはその日のうちに、
自社サイトの全てのページにデカデカと打ち出しました。

「東日本大震災」の名が示す通り、被災地のお客様ならば「遅れても仕方ないね」と分かって頂けることでも、それ以外の地域にお住まいの方にしてみれば「なぜ届かないのだ」ということにもなりかねません。

これはもちろん、
関東・東北以外の方が薄情だと言っているのではなく、
「お金を払って届かないことに人は焦り、苛立つ」
ということです。
お客様の不安を除くことは、とても大切なことなのです。

この告知文は運送会社の状況に応じて、
次々と差し替えていったので記憶も曖昧ですが、
たしか数日を経てもなお
【東北と一部茨城は目途が立たない】
という告知を掲げていたように記憶しています。

それが、しばらくして【福島・宮城・岩手のみ】となり、
やがて【一部地域】となり、表示は消えていきました。

この頃、関東と東北をつなぐ交通網に何が起きていたのか、
そしてどのように復旧していったのかは、
『前へ!―東日本大震災と戦った無名戦士たちの記録』 (新潮文庫)
という名著に詳しく記されています。

いわゆる「くしの歯作戦」というやつですね。
日本にはなんと優れた人材がいるのだと誇らしくなります。

掲載すべき情報は、その他にも

  • わかるなら発送再開予定日
  • すでに入金済の商品の扱い
  • 予約商品があればキャンセルの可否
  • 電話受付などの営業時間変更
  • 即日発送の一時見合わせ

など、どのような告知が考えられるのか、
平素より部署で話し合っておくのもよいでしょうね。

実店舗が存在するなら、営業時間に関する告知も忘れるな

さて、当時働いていた会社では、
ECサイトと共に実店舗も運営していたので、
営業時間変更の告知も打ちました。

私のホスピタリティの考え方はあの会社で身についたもので、
この当時、最も気にしていたのは
「この状況でお客様は来店できるのか?」ということ。

しかし
「この状況で遠路はるばる来て頂き、閉まっていたら申し訳ない」
という上司判断のもと、結局は普段通りということに。

ただし「計画停電が始まったらそこで閉店」という、
特別ルールで店を開けていたのを覚えています。

我が身になって考えてみれば、
油不足からガソリンスタンドが閉まっていた当時、
お店が開いてるという確証もなく、
ホイホイとハンドルを握ることはありませんでした。
絶対にホームページを観ていたはずです。

このあたりの告知も、
抜かりなくやっておいたほうが良いでしょうね。

次に遭遇したときに備えて…検証用スマホなどに更新用の環境を作っておこう

事務所からわずか5キロほど離れた我が家では停電となり、
テレビから情報を得られなかった母は、
しばらく「震源地は栃木」と誤認していました。
これだけ揺れたのだから、震源地は至近であろうというわけです。

が、先述の通り、不思議と私のいた事務所の中だけは、
UPSもないのに電気からインターネット回線に到るまで、
いつものように繋がっていました。

仕事を終え、帰宅するときになって初めて、
電気の消えたコンビニや手旗信号の警官を見て、
事態の深刻さに気付いたぐらいです。

ここで教訓。
【不確定要素は織り込むな。ライフラインは寸断されていることもある。…生きてることもあるけど】

そんなわけで、前回は大丈夫だった職場ですが、
次の地震の時にセーフである保証はありません。
停電になれば、事務所のモデムルータは動きません。

どっこい生きてるモバイル通信

しかし、モバイルのデータ通信は、
よほどの事がない限り生きています。

前の震災でも電話回線は通話規制がかかっていましたが、
ツイッターなどで情報の交換はおこなわれていました。
人命が助かった例さえあります。

パソコンならば、テザリングで繋がるかも知れません。
スマホやタブレットでは、
アップロードに耐える画像の編集は難しいでしょうが、
CMSで作られたサイトならば、
テキストで告知が打てるぐらいの環境を、作っておくのがよいでしょう。
WordPressには更新専用のアプリさえ提供されています。

あの時は、ソーシャルメディアが、
生の情報を得るのに大変役立ちましたし、
その後の大水害などでも、
ツイッターのハッシュタグを使った救助要請が、
有効に使われたと聞きます。

かえって混乱とならないよう、
告知は重要なもののみおこない、
より被災度の高い地域に迷惑が掛からないよう、
データ通信さえも「パッと繋いでパッと切る」ように、
心懸けていたいものですね。

災害に備えて、オフィスやカバンの中に常備しておきたいもの

後になってあの日のことを振り返ってみると、後輩のスタッフたちに対し、
「これは前後で価値観を変えてしまうぐらいのことだ」と、
まるで評論家が言いそうなことを口にしたのを思い出しました。

当時あの事務所にテレビはありませんでしたが、
何故そのように感じたのかといえば、携帯電話のワンセグテレビで
「津波で流れるコンテナ」の映像を観ていたからでした。

「今日は特別! テレビ見てていい! Ustreamも許可する!」
と宣言したのを覚えています。
原発が水素爆発を起こすのを見たのも、ネットの動画でした。

しかし、次にあのようなことが起きたなら、
多分ワンセグ機能は使わないでしょう。
理由は当然、バッテリーが恐ろしいスピードで無くなるからです。

阪神大震災を経験していなかった私たち関東人にとって、
まさかあれほど不便な一ヶ月になろうとは、思いもしませんでした。

携帯用バッテリーを持ち歩こう

さて、そんなスマホ時代。
停電の長期化に備え、私は今でも普段から
携帯用バッテリーを持ち歩いています。

これは平素、客先でバッテリーが
切れてしまった時にも使えるので、大変便利です。

が、災害下においてこのバッテリーは、
家族との連絡用であったり、あるいは、
先述の通り役目を果たすための非常更新用であったり、
いざという時の「切り札」として使うべきものと認識しています。

よって、震度がいくつだろうが、
長時間テレビを観るために使うことはないでしょう。

長時間にわたり情報を得られる、
とても良い方法があるのですが、それについては後述します。

食料を常備しておこう〜食料の蓄えが気持ちの余裕を生む

ちょっと脱線します。

「金持ち喧嘩せず」という言葉があります。
これは、強い格闘家が意外と優しい目をしているのにも、
一脈通じるものがあるのでは、と思います。
その場にいる全員をぼっこぼこにできる戦闘力があれば、
きっと優しくなれることでしょう。

寛容の気持ちは、余裕から生まれます。
「災害時に物を買い占めるな」と言われても、
食料が潤沢にあると知れ渡っていたなら、
きっと誰も買い占めなどしないはず。

さきの震災において、
この問題がうんぬんされていましたが、
地震発生から一週間以上経過した後になって
「買い占めはやめよう」と啓蒙CMが流れていたのには
正直驚かされたものです。

なぜなら、あの日3月11日の夜の時点で
コンビニに食料がなくなっているのを、
私はリアルに見たからです。

その時になって、どんな啓蒙をしてもムリムリ。
現に目の前のお店から食べ物がなくなっているのに、
それでも買わずにいられるのは、
山口良忠判事のような立派な人格の持ち主でない限り、
むしろ平素より「蓄えておきましょう」と促すほうが、
よっぽど現実的というもの。

次の大災害の時、
自分が何をすべきか・何を為さざるべきかを考えるとき、
若干の食料が事務所のデスクの中にあるか・ないかで
思いのほか判断が変わってくるのではないでしょうか。

カロリーメイトでも、ベビースターでも構いません。
サバ缶でも、桃缶でもいいでしょう。
何かしらデスクに入れておくべきです。

空腹は、冷静な判断の最大の敵なのですから。

自宅にも常備しておこう~家族の空腹の不安を取り除くために

余談ですが、震災の経験を活かし、
我が家では、常時5キロの余裕をもって
米を買うことにしています。

あんまりたくさん蓄えていても鮮度が気になるし、
オカミの言う「2〜3週間はしのげる量」は満たすし、
5キロもあれば、帰宅困難者になるか、
帰宅強行者 ※ (造語)になるかの判断も変わってくるはず。

※ オカミは、無理な帰宅は緊急自動車の通行の妨げになったり、地割れを起こしている危険もあるので、無理に帰るな、と言っています。が、電車で30分程度の距離なら、どう判断するにしても、普段から一度は徒歩帰宅のシミュレーションをしておくべきでしょう。

帰宅後、電車や道路などの社会インフラがやられてしまったら、
復旧までしばらく自宅で籠城することになるでしょうから、
この米は極めて重要です。

この米を食べ尽くして助かる見込みがないなら、
それはもう国レベルで、いろんな意味でオシマイなので、
潔い最後の迎え方を考えることにしますね。

情報が手に入れば不安は減る!ワイドFM対応ラジオを持ち歩こう

話を本筋に戻します。
リアルタイムの災害情報は、どのように得ればよいのか。
人間は、空腹だけでなく、不安があっても正確な判断を下せなくなります。

実家の周辺はどうなっているのか。津波は? 原発は?
前回の地震を経験していればこそ、
「あんなことが起きてるんじゃないか」と不安になることでしょう。

それを解消するためには、2015年から始まった、
ワイドFMラジオを使うと良いでしょう。

私のような古い考えの人間は、
FMで流れる番組の情報密度をいまひとつ頼りなく、
音楽ばかり流しているものと感じてしまうもの(偏見)です。

が、このワイドFMは、
電波こそFMを使っているものの、
中身はAMと全く同じものが流れています。

東京都心なら、TBSラジオと文化放送、
ニッポン放送が聴取可能です。

当然ながら、スマートフォンでワンセグテレビなどを観ていたら、
あるいはラジコなどを聴いていたら、
あっという間にバッテリーが無くなってしまいます。

しかし、FM受信機能付きのMP3プレーヤーなら、
先述の携帯用バッテリーと組み合わせることで、
一週間ぐらいは情報を取得し続けることが、
できるのではないでしょうか。

※ ゴンスケに深い意味はありません。
この手の写真になるとダンボーを載せる方が多いので、
うちはゴンスケにしてみただけです。

私が持ち歩いているのはこれ。
が、これは日本の店頭で売っていないモデルであり、
ヨドバシのネット通販で買いました。

何が腹立つって、
フツーの電気屋で売っているラジオは、みな無駄にデカイのです。

よく自治体の方が「災害に備えて携帯型ラジオを」と言いますが、
スピーカーがついてる機種は重たいから携帯なんてできないし、
このぐらいのサイズが一番現実的です。

なんでこのサイズをマトモに売らないのでしょう。
災害の危機がそこまで迫ってるんちゃうんか。

これがあれば、寂しい夜はLFでオールナイトでも聴けばいいし、
好みじゃなければTBSでおぎやはぎでも聴けばいい。

都心に居ながら一週間を過ぎても事態が好転しないようなら、
先ほど申し上げました通り、
それはもう小松左京の小説みたいな世界ですから、
あとは運を天に任せましょう。

急場をしのいでから…お見舞い文を掲載したい気持ちはわかるのですけど

私が勤めていた会社は実店舗があったので、
その後はチャリティイベントなどを開催しました。

WEBや紙媒体を通じて告知をおこない、
困っている同胞のためになかなかの金額を集められたのが、
とても誇らしかったのを覚えています。

一段落しましたら、会社の方針によって、
「お見舞い文」を掲載するのもよいでしょう。

載せっぱなしのお見舞い文には気がない

そして、
これは批判になってしまってはいけないとは思うのですが、
WEBに携わる者として申し上げたいのは、
「お見舞い文にも2種類あるよ」ということ。

いわゆる大手企業のサイトでも、
震災発生から1年ぐらいは「お見舞い」のメッセージが、
トップに掲載されていました。

5年を経た今も、
トップにバナーが貼られているサイトをたまに見るのですが、
実際にクリックしてみると、
「その中身は2種類ある」ことに気付かされます。

すなわち、
「更新日が新しく、復興支援活動の報告が事細かに書かれているもの」 と、
「震災発生から一切更新されていないもの」。

批判はあまり書きたくないのでこのあたりで筆を置きますが、
なんだかこれ、孔子あたりの格言にありそうな話ですよね。
「ナンチャラカンチャラすくなし仁」とかいうのでしょうか。

WEB担当者的に、
被災者の方々が「最終更新日:2011年3月20日」というのを見ても、
あんまり良い気はしないだろうし、

五年間も更新しないコンテンツが
トップページにあるのもどうかと思うし、
社内の風通しの悪さが伝わってきてしまうので、
そろそろ掃除したほうがいいと思います。

(日々更新されているなら話は別ですよ)。

EC責任者も店頭並みの危機感を

備えあれば憂いなし。
準備魔の私にとって、とても良い響きの言葉です。

南海トラフ地震が襲ってくる前に、
いざという時でも職責を果たせるよう、
何より「死んでしまわないよう」、
備えを怠らないようにしておきましょう。

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代表・デザイナー
小川 知久
Tomohisa Ogawa
中目黒の広告代理店でウェブディレクターを勤める現役のウェブデザイナー。5年にわたりアパレル系通販サイトの部門長を勤め、ビジネスの視点からデザインに携わった後、ウェブを通じた人材採用について、デザインとライティングの両面からトータルコンサルティング。上流から下流まで貫通して携わります。
無期休業中につき、現在お仕事は承っておりません。
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デザイン事務所ヒサクリエ

無期休業中につき、現在お仕事は承っておりません。

アパレル系通販サイトの運営を勤めた後、広告代理店でウェブディレクションに携わる。ウェブや紙媒体を軸にした企画運営から、デザイン、コーディングに到るまでを一手に担う。

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