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イメージを伝える効率的な方法~ウェブデザイナーに対しウェブディレクターが

2016/08/10 [Wed]

今回は、ウェブディレクターを主になりわいとしつつ、
ウェブデザイナーとしてもお仕事をさせて頂いている、私の考えをひとつ。

イメージが伝わらない!参加できなかった打合せには危険は潜んでいる

他人様を信用できない、
というわけではないのですが……。

ウェブデザイナーとして、たまたま自分が出席できなかった
クライアントさんとの打ち合わせの内容(伝聞)を基に、
企画やデザイン、コーディングをやることになった時。
すなわち、直にイメージが伝わっていない場合。

その難易度は、魔界村級とはいいませんが、
最初のほうのロックマン級 になっているのは、
間違いないのであります。

「そんな大事な打ち合わせなら出ろ!」
というご指摘ごもっとも。

しかし、往々にしてウェブのお仕事というものは、
「なぜか作り手の出席していない大事な打ち合わせからスタート」
というケースも少なくないもの。

それは、上司と先方の重役との間で話がついていたり、
営業さんとあまりインターネットに詳しくないクライアントさんとの間で、
すでに話がついていたりする場合。

今回は、作り手が困る「よくあるパターン」を基に、
「それを繰り返さないためにはどうすればいいか」、
「出席していないスタッフにどうイメージを伝えればいいか」
を説き明かしていきたいと思います。

まずは営業スタッフの性格を分析するところから!イメージの伝聞において注意する点をいくつか

経験豊富な取り次ぎ役ならば問題ないのですが、
あまり詳しくない、若すぎるスタッフが出席している場合は注意が必要です。

まずは、目の前の営業さん(またはウェブディレクター)の
ヒアリングのクセを理解するところから始めましょう。
次に挙げるタイプであるなら、ちょっと危険です。

  • 漠然としたデザインのイメージ(競合サイトの共有なし。スタイリッシュとか高級感とか、漠然とした印象の話のみ)ばかり聞いてくるタイプである
  • クライアントさんの夢や理想ばかり(KGIの話ではなく、いつかは六本木に自社ビルをとか、社員全員にレクサスをとか、本当に夢みたいな話ばかり)聞いてくるタイプである
  • 達成目標や金額、納期といった細かな数字ばかりを聞いてきて、デザインやターゲットの話を一切聞いてこないタイプである

「おや? この3タイプのもう少し突き詰めた部分を聞いてきてくれたなら、デザイナーが打合せなんて出る必要ないじゃん」というのは言い過ぎですが、上の3つのタイプの場合、一側面しか聞いてきてくれないから企画書やカンプが作れないのであって、あらかじめこちらから「聞くべき内容」を指定しておけば――

  • クライアントさんの人となりを知り、デザイナーの自分のことも知って頂く

という重要な一点を除き、まだまだ挽回できるはずです。

そんなわけで、先述の困った3タイプを、ネガ写しにしてみます。

  • 明確なイメージやベンチマークすべきサイトを聞いてきてくれている
  • クライアントさんの数値化された具体的な達成目標を聞いてきてくれている
  • ターゲットとする層を聞いてきてくれている

ほらね、少しでも経験のあるウェブデザイナーなら、
もうこれだけでラフぐらい作れるというものです。

ここで、私の過去記事をピックアップ。

営業さん(または代打で出席するスタッフ)に持って行ってほしい
ヒアリングシートについては、こちらの記事をご覧ください。

打合せというものを、もっとビジネス目線で考えるなら、
こちらの記事もセットでどうぞ。

代打スタッフからイメージについて報告を受ける際はこうすればいい

で、先述しましたのは、まだ事が起こっていない場合のお話。

すでに自分抜きで打合せが終了してしまった場合、どうすればいいのか。
一体どのように、イメージを共有すればいいのか。

大事な情報かそうでないかはデザイナーが決める。まずは聞いてきたことを吐けるだけ吐き出せ

まずは、話を聞いてきた代打のスタッフに、とことん喋らせましょう。

思い出せるだけ思い出し、
とったメモから吐き出せるだけ吐き出させます。

人間が、印象に残ったことから順に意識の表層に上らせ、
吐き出すのは当たり前のことなので、
ウェブデザイナーがデザインしやすいような、
イメージを再構築しやすい思い通りの順番になんか喋ってはくれません。

  • 初老の感じの良い方だった
  • ライバルの○○店には負けたくないと言っていた
  • △△チェーンのデザインが気に入っている
  • ホームページをリニューアルしたいがこの機能は手放したくない
  • 予算が厳しいので3分割してほしい
  • うんぬん…
  • かんぬん…

「ええか? ええか? ええのんか?」状態になるまで、
とことん吐いてもらいます。
そうしないと、本当にイメージ伝達の軸となる情報が出てこないからです。

こう考えてください。
いっぱしのウェブデザインの経験者なら、
これだけ情報があれば、手描きのラフのひとつも持ってくるはずです。

そのイメージがないのですから、
デザインをする上での情報の優先度は、
目の前のこの新人君にはつけられていないということになります。

これだけ情報が出てくれば、又聞きのあなたでも、
雲のようにモクモクと、
過去に手掛けたことのあるジャンルならなおのこと、
完成のイメージが沸き立っているはずです。

競合サイトを見ながらイメージを固め、伝えていこう

次は、その代打スタッフと一緒にパソコンを開き、
競合サイトを見ます。

別に同業他社のサイトだけ見ろ、とは言っていませんよ。
「スタイリッシュに」と言われたなら、その大御所のサイトを。
「バカ売れさせたい」と言われたなら、その大御所のサイトを。
いろいろ頭の中で組み合わせながら、イメージを固めます。

あなたが、ある程度UIを知っている方なら、
先ほどの情報と融合させることで、
もうワイヤーフレームぐらい作れるはず。

ラフスケッチで構いませんので、1セクションに対し1枚ずつ、
シャーペンでサラサラサラっと描いていきましょう。

「お前手描きすっきゃな〜!」と言われそうですが、
あくまで手描きにこだわるのは、
ガンダムのマグネットコーティングみたいなものと思ってください。
パソコンやタブレットでは、
瞬時のひらめき・訂正をかたちにできないのです。

どんなサポートツールよりも高速に
「この構成だ!」という一瞬のひらめきを視覚化できるようになるのは、
脳に電極を差し込んでスキャンするような機械が発明されるまで、
まだまだ先のようです。

  • 余談ですが、電子書籍がまだ紙の本を圧倒できないのは「確かこのあたりのページだった…」という、名付けるなら「手の感覚しおり」が再現できていないから、脳が感じる微妙な違和感を作り出せないからだと思っています。
    この「手の感覚しおり」は電子化しにくいもので、仮に「残りページ数1.5cm幅=15px」のように視覚化できたとしても、繰り返し読んだ本の「紙のでこぼこ具合」や「目的の章まで3ページ前の挿絵のスケ具合」など、微妙なものを人間の脳は「しおり」代わりにして、本を楽しんでいるのではないでしょうか。

すいません、脱線しました。

最近はLP型の縦長のページが多いので、
テーブルの上に数枚を縦に繋げ、
1ページのイメージを作り上げていきます。

ここで肝心なのは、必ず1セクションに対し、
1枚で描いていくこと。

なぜそんな、紙を使いまくる雑な描き方をするのか。
それは例えば、こういうケースが考えられるからです。

  • このクライアントさんは、鋳物の加工が優れている。…のに、競合会社のサイト構成に似せようとするあまり、自社にアドバンテージのない一貫生産のアピールばかりしている!

ならば——と、紙の順番を上下入れ替え、
鋳物の加工の強みをファーストビューに持ってきて強調することで、
ワイヤーフレームを清書する際のイメージ作りが
しやすくなるというわけですね。

そのほか、以前担当させて頂いたホテルさんでは、
「競合他社には温泉があるのにこちらには無い。しかし食材の質ならこちらのほうが上だ!」
ということで、構成の順番が変わったことがありました。

まずはデザイナーの頭の中に全体像を作らせてからイメージの細部を伝えるべし

逆に、ウェブデザイナーという人種というのは、
ヘッダからフッタに到るまでの
ザックリとしたラフさえ出来上がっていれば、
「ここもアピールしたいんです!」という、
添え物の情報を採り入れる余裕が出てきます。

「とにかくページの全体像から先に固めよう」と言うと、
「早く帰りたいんすか!」とツッコまれたりしますが、
「君は、塗り絵をフチから塗らないのか?」と返します。

これはウェブデザインにかかわらず、仕事の効率の問題です。
ダラダラと細部をこねくり回すのは、お客様のためにもなりません。

インパクトのある部分から伝えるな。イメージの外堀から順に埋めていくのが正しい伝達術

しかし、デザインをやらない人は、
いきなりインパクトのある部分、
曲でいうところのサビの部分から歌ってしまいがち。

デザイナーに対し、
イメージが伝わらない根本的な原因もここにあります。

テレビゲームで例えるなら、
「ここでボスキャラが登場!ヒロインが叫んで主人公が覚醒して、挿入歌が流れて敵が変身して…」みたいな、いきなり大メインクライマックスの話をされても困る、というわけですよ。

これは、プロット無しで
小説を書き始めようとするさまに近いでしょうか。

まずは、全体像を伝える。
デザイナーの頭にページの全体像が描けたのを確認してから、
イメージの細部や肝の部分は伝えましょう。

ここまでくると、聞く側も聞かれる側も脳がこなれてくる

ここまで進んだら、代理で訪問したスタッフも、
もっと吐けることが出てくる(記憶が呼び起こされてくる)し、
こちらも、気になることをいろいろ問いただせるようになってきます。

「要はアレだ、とどのつまり○○さん(近隣の競合)に勝ちたいってことでしょ?」
「そうですそうです、そう言ってました!」

……忘れるなよオイ、という気がしなくもありませんが、
人それぞれ脳の作りというより情報の優先度が違うわけでして、
この若いのを責めてはいけません。

数値化できないクライアントさんの理想や情熱みたいな部分は無理に伝えようとするな

直接対面で話を聞いた人は、
クライアントさんのキャラクターが個性的であればあるほど、
そのパッションの部分を先に伝えようとします。

しかし、伝聞では、そのインパクトは半減します。
聞き手には「よくわからない人だったんだな」という
印象だけが残ります。

クライアントさんの「理想のアツさ」みたいなものは、
最後にとっておいて、
まずはクライアントさんが口にした、実際の中身を伝えましょう。

なぜ、クライアントさん第一主義の私が、
そんなことを書くのか。

なぜクライアントさんの強烈な個性を先に伝えてはいけないのか?

ここで、イメージ伝達のための実験をひとつ。

皆さん、『魁!!男塾』の江田島平八や、
『キングダム』の王騎将軍のビジュアルを50文字ぐらいの文章にまとめ、
これらキャラクターを知らない人に伝えてみてください。
(どちらもご存知ない方は、内田裕也さんとか志茂田景樹さんでも構いません)

絶対にオリジナルのインパクトは損なわれ、
初めに絵や写真で見せたほうが、受け手の衝撃は大きいはず。

言葉や文章では実物を説明しきれないし、普段から
「ネットは文章より画像が大事」ということは分かっているのに、
いざ我が事となると、それをやってしまう。

実物よりショボく伝わるぐらいなら、
想像してもらうほうがマシです。

たまに「説明」が実物を越えてしまう場合もある

では、言葉や文章では実物を越えられないのか?

その一方、小説が原作の作品が映画化されたりすると、
「原作のほうが良かった」と言われたりする。

どういうことかといえば、こういう仕組みです。

原作の文章が優れており、
実写化の予算の制約からも自由なので、読者の想像力が掻き立てられます。
結果、読者の脳内で組み上げられた舞台・人物のほうが、
現実に作られたCGや役者に勝ってしまった。それだけのことなんですね。

クライアントさんの人柄は、淡々と冷静に伝えるべし

つまり、ウェブディレクターや営業さんは、
クライアントさんの「地雷」さえ探知してくれれば、
アツい人であるのなんて、
ウェブを強化して事業を拡げたいという時点で分かっているわけです。

私の場合、会っていないクライアントさんが
仮に情熱的ではない、上に言われて仕方なくリニューアルを
進めている担当者の方であったとしても、
情熱的な人だと想像して作っています。

そのほうが、良いものを届けようという、
モチベーションに繋がりますからね。

まとめ~これだけできればイメージは伝わる

打合せに参加できなかった、または、
ウェブデザイナーにイメージを伝えるのが苦手だという
ウェブディレクターや営業さんへ。

  • まずは、情報の軽重にかかわらず全てのメモを吐き出す
  • 細部に拘泥することなく、ウェブデザイナーとウェブディレクターが協力しながら全体像を描き出す

という段取りでいけば、きっと効率的に良いものが作れるでしょう。

お互いの特質を知ることでイメージの共有はスムーズになる

「どうもウチのウェブディレクター(または営業)は伝えるのがヘタで困る」
と悩んでいるウェブデザイナーがいたら。

または「どうもウチのウェブデザイナーは熱意がなくて困る」
と困っているウェブディレクター(または営業)がいましたら。

こういう考え方をするやつもいると、
どうかお互いのことを分かってあげてください。

ウェブデザイナーを兼ねるウェブディレクターが言っているのだから、
そう間違っていないと思いますよ。

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代表・デザイナー
小川 知久
Tomohisa Ogawa
中目黒の広告代理店でウェブディレクターを勤める現役のウェブデザイナー。5年にわたりアパレル系通販サイトの部門長を勤め、ビジネスの視点からデザインに携わった後、ウェブを通じた人材採用について、デザインとライティングの両面からトータルコンサルティング。上流から下流まで貫通して携わります。
無期休業中につき、現在お仕事は承っておりません。
  • ディレクション
  • コンサルティング
  • ウェブデザイン
  • コーディング
  • 企画
  • ライティング
  • イラスト
  • 運営・分析
  • 遊び心

デザイン事務所ヒサクリエ

無期休業中につき、現在お仕事は承っておりません。

アパレル系通販サイトの運営を勤めた後、広告代理店でウェブディレクションに携わる。ウェブや紙媒体を軸にした企画運営から、デザイン、コーディングに到るまでを一手に担う。

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